大関高安(28=田子ノ浦)が、稀勢の里にささげる白星を挙げた。くしくもこの日の相手は、前日3日目に稀勢の里に引導を渡した栃煌山。かち上げで突き放し、相手に反撃の隙を与えずに突き出した。「まだまだ甘いけど前に出ることだけ考えた」と言い、しっかりとうなずいた。

兄弟子が引退を決断し「今日は負けられなかった」と特別な思いがあった。「若いときも、関取になってからも数え切れないほど稽古をつけてもらった。今があるのはその稽古のおかげ」。普段の口数は少ないが、この日は感謝の言葉がスラスラと出てきた。

2つの悲願を誓った。引退会見で稀勢の里は高安に対し「まだまだ上がある」と、横綱昇進を期待。高安も「それが1番の恩返しになる」と応えるつもりだ。さらに稀勢の里が初優勝した17年初場所の優勝パレードで、横綱と同乗したオープンカーからの景色が忘れられない。「その光景は今も色濃く残っている。自分もまたあの景色を拝めるように頑張りたい」。

大関陣で唯一の優勝未経験。今場所はすでに2敗と出遅れたが「明日から少しでも恩返しができるように」と、目の前の一番に集中する。【佐藤礼征】