西前頭6枚目阿武咲(22=阿武松)が、幕内では自身2度目となる初日から5連勝を飾った。

4連敗中だった嘉風を終始攻め立て、最後は突き出した。16日に現役を引退し、年寄荒磯を襲名した元横綱稀勢の里に幕下の時に稽古をつけてもらった恩を、勝ち星で返す。全勝は白鵬、御嶽海、阿武咲、魁聖の4人となった。

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阿武咲が、立ち合いから低く、鋭い踏み込みで頭からぶち当たった。回転の早い突っ張りに、ベテラン嘉風もなすすべがなかった。土俵の外までほぼ一直線。「しっかり足を出せて良かった。思い通りの流れだった」。右膝のけがで番付を落としていたが、1年前は小結。先場所11勝で3回目の敢闘賞を受賞した勢いを、今場所も持続させている。

憧れであり、恩人が土俵を去った。16年夏場所で幕下に陥落した時、当時大関の稀勢の里がわざわざ出稽古に訪れてくれた。「自分を引き上げようとしてくれた。幕下に稽古をつけてくれるなんて、ありえないじゃないですか? かっこつけたりしない。どこまでもまっすぐ。人としてすごく尊敬できる」と感謝は尽きない。下半身の使い方など、当時のアドバイスを生かして翌場所に幕下優勝した。小さい頃からのスターは、自身が角界に身を投じても変わらない存在だった。

22歳6カ月と幕内では関脇貴景勝に次ぐ若さだが、名横綱の姿勢を継承したい思いは強い。「横綱でもボロボロになるまで稽古をする。それが大事なんだと。自分がこれから先につなげたい」と言い切った。全勝は4人。序盤戦ではあるが、先場所に続き優勝戦線に残った。最大の恩返しは「自分の番付を上げること」。上位陣が安定感を欠く中、若手のモチベーションがより高まってきた。【佐藤礼征】