残念ながら稀勢の里関とは1度も会ったことがないんです。ただ、相撲ファンの1人として、いつも取組は気になっていました。あれだけ多くのファンを引きつけた横綱は、貴乃花さん以来ではないでしょうか。黙々と自分と向き合い、不器用で、背中で語る姿は、日本人が思い描く理想の横綱像ですね。

その存在感は、野球界で例えるとロッテ福浦(和也)さんに似ていると思います。仲間内ではよくしゃべるけど、表では無口。いい時も悪い時もひたむきにプレーする姿は重なります。

稀勢の里関について言えば、より日本人の魂に刺さるものがあったと思います。まず19年ぶり日本人横綱という背景がある。そして日本人が伝統的に好む「判官びいき」も作用しているでしょう。ロッテも18連敗した時に一気にファンが増えました。稀勢の里関も何度失敗しても真正面からぶつかる姿に、応援せずにはいられなくなります。

今後は親方としての指導力にも期待しています。というのも大きなケガをしたことで、適切な指導ができると思っています。休場のするタイミングの見極めやメンタルサポート、治療方法の引き出しが増えることなど、弟子たちは心強いと思います。ケガは選手としてはマイナスでしかないが、これからの長い人生においてはプラスしかない。稀勢の里関のようにファンを引きつける横綱を育ててほしいと思います。

◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にドラフト2位でロッテ入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。14年引退。プロ通算1089試合出場、打率2割5分6厘、108本塁打、458打点。