新関脇の貴景勝(22=千賀ノ浦)が4回目の挑戦で初めて横綱白鵬を倒し、2桁10勝目を手にした。2敗を守って首位に躍り出た関脇玉鷲とは、星の差1つ。大関昇進の目安となる三役で3場所33勝まであと1勝とした。関脇以下の連続優勝は、優勝制度が確立された1909年6月以降8度あるが、同一力士が成し遂げたことは1度もない。快挙へ機運が高まってきた。

横綱を地面にはわせると、3日連続で座布団が舞った。貴景勝が幕内優勝41回を誇る大横綱に“4度目の正直”で勝った。場所前の稽古総見で5番取ったが全て完敗。取組前は「横綱に勝ってるところは何一つない。唯一、気持ちだけは心の持ちようで何とかなる。後は力を出し切るだけ」と話していた。

先場所でさえ渡った伝家の宝刀が、今場所初めて決まった。立ち合いからまわしを奪いにくる白鵬を、3度突き放す。貴景勝の強力な押しに応戦するため、前のめりに突っ込んできた横綱を見逃さなかった。「体が自然と反応してくれた」と、素早く左へ動き強烈な突き落としを決めた。

今場所の白星は全て押し、突きで相手を土俵外に出していた。初優勝を果たした先場所で3度飛び出した決まり手が、13日目にしてようやく出た。「初日から自分の流れでやりたかったけど、なかなかそうさせてもらえなかった」と大粒の汗をぬぐった。6日目までに2敗。早々と優勝戦線から後退したかに見えたが、大関、横綱戦が続く終盤戦で本領発揮だ。

大関とりへ風向きが変わってきた。大関昇進の目安となる、三役で3場所33勝にあと1勝。場所前に阿武松審判部長(元関脇益荒雄)は「(今場所は)明確な大関とりの場所ではない」と話すが、横綱撃破でムードは高まりつつある。関脇以下の同一力士による2場所連続優勝となれば、優勝制度が確立された1909年以降初めての快挙となる。大本命とされた白鵬含め、上位陣が不安定な今場所。V争いについて貴景勝は「明日も出し切って、負けたらしょうがない。持っているものを出す」と意欲をにじませた。2敗でトップに立つ玉鷲との対戦は終えているが、メンタル面の強さも魅力だけに、いやが応でも期待が高まる。【佐藤礼征】