大相撲の関取衆を対象とした研修会が5日、東京・両国国技館で行われ、「暴力やハラスメントのない相撲界を目指して」というテーマのもと、講師として招かれた日本スポーツ法学会理事で早大法学学術院教授の棚村政行氏(65)が約1時間、熱弁をふるった。

棚村教授は「暴力やハラスメントからは何も生まれない」と力説した。過去のスポーツ界における暴力、ハラスメント、八百長事件を例にスライド49枚を駆使して説明。暴力では2012年12月の大阪・桜宮高バスケットボール部主将の自殺事件、ハラスメントでは昨年のレスリング女子日本代表に対するパワハラを具体例として持ち出した。八百長や賭博に関する事例では、昨年テニスの不正監視団体(TIU)から永久追放を受けた日本人選手や、10年の大相撲野球賭博問題を挙げた。

中学時代に運動部で体罰を浴びた自身の経験談も挟んだ。バレーボール部の主将ながら陸上の大会で好成績を収め、バレーボール部の監督から「俺に断りなく出た」「俺を裏切った」として、見せしめとして牛乳瓶で数十回殴打され鼻を骨折。不当な理由で身体を傷つけられ、自尊心やプライドをへし折られたという。「一時の感情や怒りで暴力に訴えても人の心や態度は変えられない」。自身の経験も交えて、角界を背負う現役力士に訴えた。

横綱白鵬(33=宮城野)は「いろいろな経験を持っている人だから、なるほどな、と思った」と話した。前日4日に行われた全協会員対象の研修を深掘りした内容に、関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)も「昨日と同じく勉強になった」とうなずいた。