横綱白鵬(34=宮城野)が、全勝を守って単独トップに立った。東前頭4枚目の栃煌山に、背後を取られながらも逆転の小手投げ。歴代ダントツ47度目のストレートでの勝ち越しを決めた。

瞬時の判断力、体のキレに衰えを見せず、昨年秋場所以来、3場所ぶり42度目の優勝に近づいた。前日7日目まで全勝の逸ノ城は敗れ、横綱鶴竜らとともに1敗で追う展開となった。

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背後から押されたまま、土俵際が目前に迫っても、白鵬だけは逆転への道筋が見えていた。左腕を振りほどき、栃煌山の右腕を抱えた。同時に右足を引き、体を開いて間合いを取った。回転させ始めていた腰を、もう1段階落とし、小手投げで土俵下まで転がした。絶体絶命の状況に「後ろに回られているからね」と、多少の動揺は認めた。だが「冷静に体勢を立て直して振り返った」と、狙い通りの逆転だと明かした。

幕内後半の審判長を務めた阿武松審判部長(元関脇益荒雄)は「一瞬のうちに3つの動作をしている。普通はできない。この集中力を保てば、かなう者はいない」と舌を巻いた。47度目のストレート給金は、歴代2位の千代の富士の25度を大きく上回る。朝稽古の時点で「50回を目指したい」と、新たな目標を見つけて笑顔を見せていた。

今場所2日目に34歳となった白鵬は常々「モチベーションを保つのが難しい」と話す。優勝回数、通算白星など主な記録は、ほとんど塗り替えた。その中で30代で活躍した千代の富士の2つの記録を見つけた。自身は優勝ペースが落ちた33歳から、千代の富士は8度優勝。「オレは1度しかないから」と、新たな目標に心を躍らせた。また千代の富士の最後の優勝は35歳5カ月。「これを超える時は東京五輪の後だな」と、1年半後も見据える。

衰え知らずを印象づけたこの日の取組には終始笑顔だった。「あと1週間、引っ張っていく」。平成最後の本場所の主役を譲るつもりはない。【高田文太】