横綱白鵬(33=宮城野)が、抜群の反射神経を発揮し、ただ1人、無傷の8連勝で勝ち越しを決め、場所を折り返した。

東前頭4枚目の栃煌山(32=春日野)に完全に背後を取られる絶体絶命のピンチ。ここから出てきた栃煌山の右腕を小手に巻き、後ろに引いた右足を軸に左から豪快に投げ飛ばした。

初場所でも4日目の北勝富士戦で、勝負ありと思われた窮地から逆転で勝つなど運動神経、反射神経の良さを見せている白鵬。文字通り拾った星に、協会トップの八角理事長(55=元横綱北勝海)は「白鵬にすれば(場所が終わって)後から考えた時に『あの1番に勝ってて良かったな』と思える1番になったのではないか。『この形で勝ったんだから今場所は優勝かな』というように、いい方にとるんじゃないかな」と胸中を察した。その上で「どんなに悪い体勢になっても崩されない柔らかさ。悪い体勢から、いかに勝っていくか。それが優勝回数に、つながっているのではないか」と分析した。栃煌山の詰めについては「まさか白鵬が、あの体勢(バランスを崩した後ろ向き)になるとは思わなかっただろう。後ろからガバッとつかまえきれずに、気持ちだけ前に行って足がついて行かなかった。それだけ白鵬が動いていたということ」と、ここでも白鵬の対応力の高さを指摘した。

土俵下で審判長として目を光らせていた審判部の阿武松部長(57=元関脇益荒雄)も「真後ろに回られて瞬間的に、小手までいっての投げ(をイメージ)。一瞬のうちに3つの動作をしている。普通じゃできません」と驚きの声。今場所にかける白鵬の執念を「後ろを向いても絶対に白星をあきらめないという気持ち。あの対応力はすごい」と評した上で「1場所15日の長丁場ですが、横綱が15日間、この集中力を保てれば、かなう者はいない」と強さを感じ取っていた。