負ければ大関陥落の土俵で、栃ノ心が息を吹き返した。玉鷲の剛腕をぬって右が入ると寄った。最後は赤鬼の形相。右手で胸を殴るようにして押し出した。

「おい、レヴァニ」。この日の朝稽古後、師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)に本名で呼びつけられた。「負けてもいい! 思い切っていけ!」-。そのハッパで「楽になった。思い切りやろう、とだけ考えられた」という。

焦りばかりが先立った場所で、7勝7敗。千秋楽は皮肉にも大関昇進を狙う貴景勝戦だ。「多分、緊張すると思うけど、勝っても負けてもいいから、思い切りいく。こんな気持ちで毎日やれればいいのに」と、吹っ切れたような笑みを浮かべた。