関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)の大関昇進が、27日午前に開かれる日本相撲協会の夏場所(5月12日初日、両国国技館)番付編成会議と臨時理事会で正式決定する。連載「貴景勝の心技体 平成最後の新大関」では、22歳の若武者の原点や素顔などに迫る。

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「組んだら相撲にならない」。貴景勝は、ことあるごとに口にする。身長175センチで腕も短く、四つ相撲には不向きという周囲の見解も強い。その中で、貴景勝が幼少期から憧れる元関脇琴錦(現朝日山親方)は、独特の押し相撲を絶賛する。「大ぶりではなく、リズミカルな突っ張りがある。身長も低いから相手はまわしを取れないし、まわしを取りにいくといなされる。貴景勝の引く動作も、いなされるのではないかと、ちゅうちょさせる。相手にとっては一番嫌な力士だ」。

突き押し1本で大関を射止めた22歳は、時代の変化の象徴なのかもしれない。18年の全6場所の幕内取組で、最も多かった決まり手は「押し出し」で452回、「寄り切り」が427回と続いた。押し出しが寄り切りを上回るのは03年以来15年ぶり。父、一哉さん(57)は「今は頭からぶつかる力士が多いけど、昔は胸から当たる人が多かった。時代は変わっている」と分析した。貴景勝自身、過去6場所の決まり手は4割以上が押し出し。他にも御嶽海、阿武咲ら押し相撲の力士の活躍も目立つ。

貴景勝と同じく押し相撲だった師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は「押し相撲にもいろんなスタイルがあるけど」と前置きした上で、要因を挙げた。「相撲界全体で体が大きくなったのもあるんじゃない。トレーニング法や栄養学も発達したから」。昨年12月に関取を対象とした体重測定の結果は、幕内力士の平均が過去最高の166・2キロだった。体重を生かした圧力も一因との見方だ。

まだ22歳。今後、スタイルが変わる可能性もある。千秋楽から一夜明けた25日、白鵬は貴景勝に「長くその地位を務めるわけだし、押し1本じゃ厳しい面もある。それなりに四つ相撲も覚えなければ」と、取り口の引き出しを増やすことを求めた。翌26日に、貴景勝は「その通りだと思う」と答えた。突き押し1本で横綱に上り詰められるのか、または幅を広げるのか-。新たな闘いが始まる。【佐藤礼征】