静岡・焼津港中で昨夏の全国中学校相撲選手権で個人、団体2冠に輝いた東序ノ口14枚目の吉井(15=中川)が、序ノ口デビューを白星で飾った。東同3枚目の大隅富士(伊勢ケ浜)に、立ち合いで頭からぶつかったが、すぐに上体をのけぞらせると、相手のいなしにバランスを崩した。それでも、耐えて攻勢に転じ、押し出した。

「緊張しました。バランスを崩しても、下からあきらめずに取れました」

177センチ、150キロ。体格は、入門当時からほとんど変わっていないが、「体が大きくなったと、最近よく言われます」と話す。前相撲で初土俵を踏んだ春場所を経て、日々の稽古で筋肉がついてきた証しだ。逆に「髪が伸びるのは遅いと言われます。ハリネズミみたい」と、こちらの成長はゆるやかで、髪を寝かせることもできない短髪の頭をかいた。

場所前には、思わぬ幸運もあった。母が大ファンの福山雅治(50)との出会いだ。東京・蒲田在住の後援者から「今、福山さんがドラマ『集団左遷』のロケをしているから」と声を掛けられ、稽古後に出向くと、偶然にエレベーターで一緒になったという。

「自分が力士であることを伝えると、『おっ、体重は?』と。で、自分が答えると、『頑張ってよ~』と優しく言ってくださいました」

吉井の名前は、虹(こう)。母が福山の楽曲「虹」にちなんで命名した。吉井は緊張で、そこまで福山に説明できなかったというが、「いつか福山さんに再会できるように、僕が出世します」。その上で「令和から番付に名前が載った力士の中で、最初に関取になりたいです」と言い切った。【柳田通斉】