新大関の貴景勝(22=千賀ノ浦)が、休場危機に直面した。取組前まで5連敗中と苦手だった小結御嶽海を寄り切ったが、右膝の内側を負傷。「痛めてないです」と詳細を明かさなかったが、師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は16日に病院で診察を受けてから、5日目出場の可否を判断すると明らかにした。

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突き押しを得意とする貴景勝が、珍しく寄り切った直後だった。膝の状態を確認するように腰を下ろした後、両手を膝の上に置いて動けなくなった。勝ち名乗りを受けると、そっと土俵を下りた。自力で支度部屋に戻ったが風呂には向かわず、右膝の内側をアイシング。呼吸はなかなか整わず「ウーッ」と、うめき声まであげた。それでも右膝の状態を問われ「大丈夫です」と繰り返し「痛めてないです」と言い切った。

大関昇進の伝達式で「武士道精神」を口にした。痛みがあっても口にしない。貴景勝と電話で話したという千賀ノ浦親方が、午後9時すぎに都内の部屋に戻ってから代弁。休場危機であると明かした。

千賀ノ浦親方 痛めています。右膝の内側。(5日目に)出られるか出られないかは、明日(16日)、病院に行ってから決めます。「痛い」と言ったら無理させることはありません。

貴景勝が負傷したのは、立ち合い直後に右足を滑らせた際だったのか、最後に寄った時だったのかは師匠も不明だった。師匠によると、15日は病院ではない可能性はあるが、知り合いにケアしてもらったという。

取組直後には、5日目以降の出場に前向きな様子も見せていた。取組前まで御嶽海戦は3勝7敗。前日3日目に北勝富士に敗れた中で天敵を迎え「2連敗すると3連敗するし、コケちゃいけないなと思っていた」と、負けられない思いは強かった。その中で勝ちきり「勝ったことが何より」とうなずいた。寄り切りでの白星は昨年7月名古屋場所千秋楽で、朝乃山を破った1度だけ。しかも「ちゃんと寄り切ったのは初めてだと思う。すくい投げが不完全で寄り切りになったことがあるぐらい」と新たな勝ち方に自信も深めていた。

新境地が見えてきた矢先のアクシデント。一部関係者からは「相当ひどいらしい」という情報もある。まだ22歳。若武者が強行出場を望んでも、止める周囲の勇気も必要かもしれない。【高田文太】