新入幕の西前頭14枚目炎鵬(24=宮城野)が同学年の矢後を破り、1敗を守った。約80キロ重い相手の懐に潜り込み、最後は上手ひねり。身長168センチ、体重99キロで幕内最軽量の業師が、平成以降では3人目となる19年ぶりの新入幕2桁白星&技能賞獲得へまっしぐらだ。平幕で唯一無敗だった朝乃山に初めて土がついた。

前ミツを取って頭をつけた炎鵬が、体重178キロの巨漢をぐるっと回した。右でひねって転がし、飛び込むように、相手にかぶさる。17年春場所に初土俵を踏み、兄弟子の横綱白鵬に「ひねり王子」と呼ばれた本領発揮だ。右上手は矢後の得意な型だったが「苦しかったけど、自分から攻めていけた」と胸を張った。

場所前から技能賞獲得にこだわっている。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、10勝以上を挙げて技能賞を獲得した新入幕力士は4人だけで、00年夏場所の栃乃花が最後。「小さい子にこの体でも勝つところを見せたい」と、使命を背負うように意気込む。

取組を見守った八角理事長(元横綱北勝海)は「こうして勝つんだという型を持っている」と舌を巻き、「小さい人が大きい人に勝つのが醍醐味(だいごみ)。今場所は精いっぱいやればいい」と続けた。大型力士に立ち向かう姿と甘いマスク。場内の歓声と拍手の大きさは、すでに幕内上位級を誇る。「お客さんが毎日力をくれる。やりやすい環境です」と感謝。「(場所前の予想は)1勝5敗だった。逆の展開になっていますね…」。謙虚な姿勢を併せ持つ、絵に描いたような好青年が今場所の主役に躍り出る。【佐藤礼征】

◆炎鵬晃(えんほう・あきら)本名・中村友哉。1994年(平6)10月18日、金沢市生まれ。兄文哉さんの影響で5歳から相撲を始める。金沢学院東高で3年時に高校総体8強。金沢学院大では2、3年時に世界選手権軽量級で優勝。初土俵は17年春場所。横綱白鵬にあこがれ、白鵬の内弟子として入門した。序ノ口、序二段、三段目と3場所連続で各段優勝を果たし、18年春場所新十両、19年夏場所新入幕。家族は両親、兄。168センチ、99キロ。血液型AB。得意は左四つ、下手投げ。通算84勝46敗。