右膝の負傷で5日目から休場し、4日ぶりの再出場となった新大関貴景勝(22=千賀ノ浦)が、碧山にはたき込みで敗れた。

テーピングを施して臨んだが、十分に四股も踏めない状態で、予測していた変化にも対応できなかった。大関以上では前師匠の元横綱貴乃花が引退した03年初場所以来、16年ぶりの再出場も、かど番回避へ残り7日で5勝と、厳しい状況に追い込まれた。横綱鶴竜と関脇栃ノ心が初黒星を喫し、平幕の朝乃山を含めて1敗が3人となった。

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帰ってきた今場所の主役は0・8秒で散った。右足の半分近くを覆ったテーピング。貴景勝は一直線に踏み込んだが、あっけなく土俵に這った。碧山が変化するイメージは「あった」が、ついていけなかったのは「自分が弱いからかかっただけ」。右足の状態は「万全じゃないですか」と言い切った。

再出場にゴーサインを出した師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は「所作は気にならなかった」と話したが、取組前の準備運動が違和感を物語っていた。この日の朝は稽古場に下りず、取組前の支度部屋では軽いすり足に立ち合いの確認、腕立て伏せを数回。土俵上で四股を踏む際、右足は上げ下げしなかった。右膝関節内側側副靱帯(じんたい)損傷と診断されて3日。ぶっつけ本番だった。

今場所を休場して、かど番となる来場所での復帰を望む声も耳に届いていた。それでも、相撲を取れる確信と、貫きたい相撲道があった。「幕下以下の時から休まずに出たことが今につながっている。必ずこの経験が何年後に成長させてくれるかなと思った。休むのは簡単。自分がこういう相撲人生をしたいという考えを持ってやるだけ」。

昨年10月から部屋移籍、初優勝、大関昇進、そして…。激動の日々を送る22歳は「一番嫌な経験が、精神的にも自分を強くしてくれる」と前向きにとらえる。横綱、大関との対戦を残す中で、かど番回避まで5勝。「まだ終わったわけじゃない」と、逆境だからこそ立ち向かう。【佐藤礼征】