関脇栃ノ心(31=春日野)が、史上5人目の大関陥落後すぐの返り咲きに王手をかけた。

小結御嶽海を盤石の右四つの形で寄り切り、9勝1敗とした。22日は、師匠春日野親方(元関脇栃乃和歌)の57歳の誕生日。11日目の阿炎戦で大関復帰条件の10勝目を挙げれば最高のプレゼント。2度目の賜杯、トランプ米大統領が授与予定の米国大統領杯も視界に入ってきた。横綱鶴竜、平幕の朝乃山も1敗を守った。

一瞬で勝利を確信した。立ち合い当たって、左まわしを取った。右も差し込む。十分の右四つで、嫌がる御嶽海を引きつけた。そのままズンズン寄って出た。満点の取り口に「稽古みたいな相撲だったな」と本人も驚いた。8日目に初黒星。9日目は不戦勝だった。相撲を取っての白星は3日ぶり。8度まわしを取って8度勝った。「不戦勝よりいい? そりゃそうでしょ」。大関復帰の10勝まで、あと1つだ。

前日夕に部屋で春日野親方に勝ち越しを報告した。不戦勝だけに気まずい。「おかげさまで…」と言うと「何?」。「いや、おかげさまで…」で、また「何?」。都合3度のやりとりで報告を終え、最後に「すみません」と謝ってしまった。いくつになっても怖い親方だが、11日目の22日は57歳の誕生日。大関復帰を決めれば、喜んでくれる。

だが、もうそれだけではつまらない。鶴竜、朝乃山と1敗で並び、賜杯レースのトップを走る。千秋楽には安倍首相とともに、トランプ米大統領が生観戦し、優勝者に米国大統領杯を授与する予定だ。栃ノ心は「(大統領杯は)でっかいらしいね。150~160センチあるんだって?」と、中日を前に話していた。情報の出どころは不明だが、正体不明のトロフィーのうわさは耳にしている。

大関復帰、昨年初場所以来2度目の優勝。「そんなのあんまり考えないようにね」。先場所6勝3敗から負け越し、大関を陥落したから、とことん慎重だが、苦い記憶は間もなく、いい経験になりそうだ。【加藤裕一】