1場所での再入幕を目指す東十両筆頭の豊ノ島(35=時津風)が、連敗を「4」で止め7勝目(5敗)。幕内復帰に王手をかけた。

過去、幕内で10度対戦し7勝3敗と相性の良かった同7枚目の臥牙丸(32=木瀬)との一番。公称199キロの巨漢相手に左、右とスンナリ2本は入った。とはいえ巨体は、そう簡単には寄り切れない。一度、西土俵まで詰めたが残られ、右からの小手投げで振られた。再度、体勢を立て直し「出ようと思ったので、かけだったけど」と差した左を抜くようにして寄り立てた。上体の浮いた相手を、渾身(こんしん)の力を振り絞って寄り切った。

4連敗のトンネルを抜け、ようやく勝ち越しに王手。「とりあえず一安心だね。また明日から」と勝ち越しはもちろん、復帰後の幕内の番付を1枚でも上げるための、さらなる星の上積みを目指す。

この日の相手・臥牙丸には特別な感情もあった。昨年秋場所にさかのぼる。この場所、西幕下筆頭で6勝1敗の豊ノ島は、丸2年の苦しかった幕下生活に終止符を打ち、関取復帰を決めた。一方、東十両12枚目だった臥牙丸は6勝9敗で、約8年間守った関取の座から無給の幕下への陥落が決まった。そんなある日、かねて食事をともにするなど交流があった臥牙丸から、電話があった。打ち明けられたのは陥落の絶望感。「(現役を)やめようかどうか迷ってます。(幕下以下が稽古で締める)黒まわしにも抵抗があるし…」。それまでの交流で「かわいいし、外国人特有の明るさもあるし」という臥牙丸の気持ちは痛いほど分かる。返した言葉は「もったいないぞ。(幕下生活は)1場所だけだと思って頑張れよ」。

その言葉通り、わずか1場所で臥牙丸は関取に復帰。その臥牙丸と16年夏場所以来、3年ぶりの対戦が実現し「久しぶりだったんでガガちゃんと対戦できて、うれしかったね。お互いに戻ってきて関取同士で対戦できて、うれしいよ」。特別な思いを胸に、一気に勝ち越しを決めたいところだ。