優勝を決めてホッとしたわけではないだろう。勝ちたい気持ちは朝乃山本人が一番強かったろうが、それもままならない御嶽海の当たりの強さだった。この強さは今場所、後半戦の数番しか経験していない。問題は来場所。三役になれるかどうかは問題ではない。横綱、大関と総当たりになることに意味がある。毎日、数段上の相手との戦いが待っている。少しずつ番付を上げるのが理想だが、大勝ちしたことで一気に上位に上がる。未知の生半可の世界ではない。その経験を生かすも殺すも自分次第。消化して自分のものにして初めて上位定着が見える。

弟子の優勝はうれしい。その半面、休場は仕方ないにしても残された横綱、大関陣が最後まで優勝争いできなかったのは情けない。名古屋場所は上位陣と、朝乃山以外でも阿炎や竜電、明生といった若い力のせめぎ合いが見たい。真の世代交代はそこから生まれる。（日刊スポーツ評論家・高砂浦五郎＝元大関朝潮）