大相撲夏場所で初優勝した前頭朝乃山(25=高砂)が5月31日、出身の富山市に凱旋(がいせん)帰郷した。帰郷は公表されていなかったが、富山県出身としては横綱太刀山以来、103年ぶりに優勝した郷土のヒーローと偶然遭遇した市民は大興奮。握手を求めて人だかりができた。6月には富山市内で優勝パレードを予定していることも判明。トランプ米大統領からトロフィーも受け取った旬の男に有名企業も注目と、地元のみならずフィーバーは広がりを見せている。

平日の人通りもまばらな富山の官庁街に、次々と人が集まってきた。「朝乃山が来るらしい!」。地元のヒーローを一目見ようと、中高年女性を中心に、会見会場の出入り口に集まった市民は約30人。お目当てが登場すると「おめでとう」の歓声があがり、すぐに握手攻め。今回の帰郷は公表していなかった。混乱を避けるために利用者の少ない改札口を使い、警察官2人に付き添われて新幹線を降りるなど細心の注意を払っていた。それでも街中うわさでもちきり。朝乃山は「人がすごかったですね。ありがたいです」と笑顔で話した。

非公表でこっそり帰郷しても、人を引きつけてしまう。そんな時の人が、6月11~13日には、富山・射水市で行われる高砂部屋の合宿に参加。さらに合宿後には、富山市で優勝パレードを予定していることも判明した。富山県の関係者は「合宿には集中していただきたいので、それ以降で現在、調整中です。日時にもよりますが、数万人集まることも想定しないといけない」と明かした。6月14日以降の実施で、本人と県側は最終的な打ち合わせの段階に入ったという。週末の実施となれば、今回の比ではないフィーバーは必至だ。

トランプ大統領から「アサノヤマ、ヒデッキ」と名を呼ばれ、片手で表彰状を渡された、今や国内外から注目される男だ。大手広告会社の関係者は「CMキャラクターの候補として、名前が出始めている」と明かす。さらに富山県に本社を構え「ジャポニカ学習帳」で知られるショウワノートの担当者は「現状で何か決まっていることはない」と前置きしたが、朝乃山については「注目して見ています」と語った。同社は元横綱稀勢の里をイラスト化した「日本の伝統文化シリーズ」を発売している実績もあり、全国の小学生の人気者となる可能性は十分だ。

令和初の本場所優勝で、次世代を担うと期待されている。それでも地元に戻った朝乃山は「富山のご飯を食べて、富山の水を飲みたい」と変わらない。地元でパレードが実現した場合は「応援ありがとうございました、という意味で手を振りたい」と、感謝の思いを伝えたい一心。そんな純朴な姿勢が、ますます人気を集めそうだ。【高田文太】

○…朝乃山は地元のNHKと民放3局、富山県の地上波テレビすべてに出演した。民放3局には特設の会場から時間差で、分刻みのスケジュールで次々と出演。NHKでも隣接する特設会場から30分間の特番を組まれた。よく通った地元の定食屋「丸忠」の唐揚げをほおばったり、富山商時代の生活ぶりをたずねられたり。「勉強をした覚えがないです」や、彼女がいたかたずねられ「覚えてないです」と、少しタジタジになって答えていた。