5月の夏場所で初優勝した東前頭筆頭の朝乃山(25=高砂)が、大関豪栄道に快勝し、白星発進した。師匠の高砂親方(元大関朝潮)から言われ続けた「攻めろ」の教えを守り、休まず前に出て寄り切り。初優勝を決めた先場所14日目に続き、豪栄道戦2連勝を飾った。2日目は初の横綱戦。尊敬する白鵬に、結びの一番で挑む。

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伸び盛りの朝乃山が、底知れない可能性を見せた。187センチ、177キロの体格を生かし、胸から当たる立ち合い。豪栄道に右を差されても、左上手を取って対抗すると、じりじりと寄った。たまらず打ってきた相手の下手投げにも動じず、すぐに距離詰めると休まず前へ。圧力をかけ続け、大関に土俵を割らせた。技術面以上に、気迫とスケール感でつかんだ白星だった。

朝乃山は「負けてもいいから前に、前にと思っていた。下がって負けるよりは前に出て負けた方が、これからの相撲人生につながると思っていた」と、目先の白星の上を行く取組中の心境を明かした。高砂親方から、場所中はほぼ毎日受ける「攻めろ」のアドバイスを実践した。この日の朝稽古でも師匠から「攻撃あるのみ。前に出ろ」と言われた。小学生時代、ハンドボールで富山県の強化選手に選出されたが、当時のポジションはGK。攻めたくても攻められない守備の要だった男にとって「攻めろ」の指導は心地よかった。

6日には、一昨年に亡くなった富山商高時代の監督の、浦山英樹さんの父から激励の電話をもらった。「先生が亡くなってから、先生に代わって毎場所電話をくれる。指導者、先輩、環境がよかったから今の自分がある」と、周囲の支えへの感謝を忘れない。

先場所、優勝を決めた14日目に破った豪栄道を再び破り、この日は賜杯返還式も初めて経験した。「また優勝したい気持ちが少しわいた」と素直に話した。先場所との最大の違いは横綱戦。2日目は近大時代から尊敬する白鵬戦を迎えるが「思い切っていくだけ」。恐れを知らない朝乃山が初金星に挑む。【高田文太】