西前頭7枚目友風(24=尾車)が全勝で序盤戦を締めた。

日体大の8学年先輩でもある妙義龍を、特技のピアノとは対照的な力ずくの小手投げで破り、初日から5連勝。「恋人」のように毎日電話で連絡を取る兄弟子、嘉風の助言を胸に、初土俵から13場所連続の勝ち越しに向けて、最高のスタートを切った。友風を含め白鵬、鶴竜の両横綱と平幕の照強が全勝をキープした。

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繊細な特技を持ちながら、取り口は豪快だ。友風は相手の差し手を左腕で抱え込み、強引に小手投げを打った。「初めて決めたと思う。あれが小手投げなんですね」。基本の攻めは突きと押し。激しすぎるあまり、3日目の取組で親指を突き指した。「相撲は大丈夫だけど、ピアノは弾けないですね」。女手一つで育ててくれた母奈美さんの勧めで小学生からピアノを習い、音大進学も考えたほどの腕前。「今は相撲1本だから影響ないです」と、突き指の影響を笑い飛ばした。

家族のようで兄貴のようで恋人みたいな兄弟子の期待に応える。今場所は日体大の先輩でもある嘉風が、全治2カ月に及ぶ右膝の負傷で初日から休場。入門前から目をかけてもらい、常に助言をもらってきた。「あの人の言うとおりにしてここまでこれていると思う」。対戦力士の対策や自身の修正点を指摘される以外にも「俺はお前の武器を知っている。(友風が勝っても)俺は驚かない」など、自信を与えてくれる言葉も多い。「メンタルトレーニングじゃないけど一言一言が身に染みる」と友風。今場所は休場により顔を合わせる時間が少ない分、行きと帰りの車でそれぞれ約20分間、電話で連絡を取り合う。「『今の俺からしたらお前が全てだから』と言葉をもらった。もう恋人みたいな感じ。今場所は嘉関の分も頑張る」。

今場所も勝ち越せば、年6場所制となった58年以降の初土俵力士では、元大関琴欧洲らに並ぶ史上2位タイの13場所連続の勝ち越し。愛の力が友風の勢いを加速させる。【佐藤礼征】