西前頭14枚目の炎鵬(24=宮城野)が、かいなひねりで矢後を破り、1敗を守った。

身長168センチ、体重99キロともに幕内最小兵ながら、187センチ、178キロの巨漢を鮮やかにひねった。矢後には新入幕の先場所も上手ひねりで勝つなど、兄弟子の白鵬に「ひねり王子」と命名されたが、やや納得できない様子。全勝のその白鵬と鶴竜の両横綱を追って、一段と注目度が上がる展開だけに、新たな愛称を急募していた。

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おひねりの1つも飛んできそうなほど、炎鵬が得意の「ひねり」で場内を沸かせた。身長で19センチ、体重で79キロも大きな矢後に、立ち合いは低く沈んで懐に潜り込んだ。だが相手に上から抱えられ、チョークスリーパーのように絞め上げられた。絶体絶命の体勢に、場内の悲鳴は最高潮。その中でも左の下手を深く取り直し、勝機を探り続けた。動いて相手を上下に揺らし、上体が下がってきたところで、タイミング良くかいなひねり。悲鳴はこの日一番の大歓声に変わっていた。

矢後には先場所の上手ひねりに続き、2場所連続でひねって勝った。それだけに「決まればいいなと思っていた。決まらなくても、そこから崩すイメージはできていた」と明かした。この日、炎鵬がひねりを繰り出すのは必然だった。「相手の足が見えて『いくしかない』と思った。タイミングも高さも、ひねりやすかった。まわしの位置、相手の位置、すべて重ならないと、なかなか決まらない」と胸を張った。一見すると不利な体格差も、最もひねりやすい体格差と、プラスにとらえて1敗を守った。

取組後はサプライズも待っていた。この日初めて着用した、鳳凰(ほうおう)の化粧まわしをデザインしたアーティストのコトと対面。810人の中から、好きなタッチの絵を描いていたアーティストに依頼すると、実は旧知の人物。金沢学院大時代、母校の石川・西南部中で一緒に教育実習を受けていた仲間だった。「本当にビックリ。実習は3人だけだったから当然覚えている。力強い絵でうれしい」と笑顔で話した。

取組前は化粧まわし、取組はひねりと鮮やかな姿で注目される。白鵬に名付けられた「ひねり王子」の愛称は「王子がちょっと」と変更を要求。報道陣の「ひねり紳士」などの案も却下した。現在は5勝1敗と好調。今後、どんな愛称を付けられるか、誰よりも炎鵬が楽しみにしている。【高田文太】