大関高安(29=田子ノ浦)が、苦手の前頭碧山を破り、1敗を守った。

碧山には取組前まで幕内で7勝11敗。兄弟子で部屋付きの荒磯親方(元横綱稀勢の里)が「前半戦のヤマ場」と位置づけた難敵との一番を、終始攻めて快勝した。他の3大関が黒星先行や休場と存在感を見せられない中、全勝の鶴竜、白鵬の両横綱を追って初優勝を目指す。

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執念で鬼門を突破した。高安は前まわしに狙いを定め、立ち合いから左を差しにいった。碧山のリーチを生かした押しに苦しんだこれまでとは違い、体を密着させた。相手がのど輪、さらには巻き替えてから力任せのすくい投げで、距離を取ろうとしているのもお見通し。自身は低い姿勢、相手は腰高のまま休まず突いて押し出した。「落ち着いて出られた。じっくり取れたのがよかった」と、内面は冷静だったと明かした。

碧山には取組前まで、7勝11敗と苦手にしていた。この日の朝稽古後、荒磯親方も勝負のポイントを「密着感」と挙げていた。同時に「今日(7日目)が前半戦のヤマ場」と断言。従来通りに相手に付き合えば初優勝は遠い。逆に「優勝する時はあっさり優勝するもの」と、日々の課題をクリアしていけば、初優勝も見えてくると予想していた。

高安は初日10日前に腰を痛め、稽古できない日が続いた。だが同親方は「彼の場合、オーバーワークでやってしまうから、いい休養になった。状態はこの1年で一番いい」と分析。加えて高安が「大嫌い」と公言する夏の暑さも、今年は30度に満たない日も多く「いいコンディションでできている」と好調を自覚する。

今場所は2、3日目と取り直しが続き、特に2日目は竜電に敗れた。それでも「切り替えができている。地に足がついている」と、落胆はしていない。むしろ「詰めだけはしっかりと取りたい」と、勝負に厳しくなった。昨年から5度も、関脇以下に初優勝で先を越された。簡単に「目標は優勝」と公言する若手にも、今場所前「幕内にいる以上は当然」と話していた。1人の幕内力士として挑戦者を強調する今場所、予感が漂い始めた。【高田文太】