<大相撲名古屋場所>◇10日目◇16日◇ドルフィンズアリーナ

 

静岡・焼津港中で昨夏の全国中学校相撲選手権個人、団体2冠に輝いた西序二段66枚目の吉井(15=中川)が、デビュー2場所連続勝ち越しを決めた。3勝1敗で迎えた5番相撲は、同東63枚目の魁當真(浅香山)との取組。立ち合いで優位に立ちながらも、相手に右を差された。そこで冷静に左上手をつかんで豪快に投げを決めた。

「勝ち越しが早目に決まったことで、ホッとしています。これから心に余裕を持っていけると思います」

デビューの夏場所では5勝2敗。この勝ち越しで来場所も番付を上げて迎えることができるが、相撲内容には満足していない。師匠の中川親方(元前頭旭里)から指導されている「四つにこだわらず、馬力で相手を持っていく」が、実現できていないからだ。

「自分でもまだまだまだだと感じています。先場所に比べると、体重も5キロ減って145キロです。夏場になって汗の量が増えたからだと思いますが、これからは落とさないようにしたいです」

今場所は残り2番。連勝で終えると、6勝1敗で三段目昇格の可能性が出てくる。だが、本人は「目先の白星にこだわらず、自分の相撲を取ることに集中したいです。そのことは、師匠にも言われています」と話す。

ひたむきな15歳。本名は吉井虹(よしい・こう)で、母親が福山雅治のヒット曲「虹」から命名した。その情報は、報道を通じて福山にも伝わっており、東京FM「福のラジオ」で、「吉井君、頑張って君の虹つかんでください」とエールを送られている。夏場所前には、ドラマロケ先で福山と言葉も交わしている吉井。母親からは「福山さんの年末ライブ(パシフィコ横浜)に申し込むから、チケットが取れたら一緒に行こう」と誘われているという。そんな母親孝行を実現するまでに、どれだけの白星を積み上げられるか。吉井は「ケガをしないこと」を心がけながら、日々の成長を目指す。【柳田通斉】