日本相撲協会は3日、西十両5枚目の貴ノ富士(22=千賀ノ浦)が付け人の序二段力士に暴力を振るい、秋場所(8日初日、東京・両国国技館)を休場すると発表した。

貴ノ富士は、貴公俊(たかよしとし)のしこ名で新十両として臨んだ昨年春場所に続く2度目の付け人への暴力。今後はコンプライアンス委員会が詳細を調査し、処分を決定するが、繰り返しの暴力とあって、解雇など厳罰の可能性も出てきた。

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貴ノ富士が再び暴力を振るったのは、8月31日の稽古総見を終え、部屋に戻った後だった。暴力を受けた付け人の序二段力士が、1日までは部屋で過ごしていたが、2日朝になって不在となっていた。師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)が連絡を取って事情を聴いたところ、貴ノ富士の暴力が判明。2日深夜に把握した師匠が、この日午後、都内の相撲協会を訪れ、鏡山コンプライアンス部長(元関脇多賀竜)に報告した。

昨年春場所8日目にも、付け人だった当時序二段の年上力士の顔面を何度も殴る暴力問題を起こした。同場所は翌9日目から謹慎休場。続く夏場所は出場停止となった。その後、兄弟子だった元前頭貴ノ岩が、付け人を殴る暴力で引退する姿も間近で接した。今夏の巡業中には「今はきつい時間が幸せ」と、厳しい稽古の毎日も、本場所に出場できる喜びを語っていた。それでも起こした暴力に、千賀ノ浦親方は「こういうことをしてしまって申し訳ない」とコメント。自主的に秋場所の謹慎休場を申し出て、協会から了承された。

芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「昨年から何度も研修を重ねている中、同じ関取が2度も暴力を振るったのは大変遺憾。重く受け止めないといけない。八角理事長(元横綱北勝海)も『大変遺憾』と話していた」と、怒気に満ちた口調で話した。聞き取りなどによるコンプライアンス委の調査終了まで、暴力の詳細は明かされないが「外傷はない」(芝田山部長)という。被害者力士側が警察に被害届を提出する考えはなく、部屋に戻る予定だ。

協会の処分も、コンプライアンス委の調査を受けて決める。協会は昨年10月に「暴力決別宣言」を発表。暴力を振るった者に厳罰を科す方針を示している。芝田山部長は「同じことを繰り返すなんて、とんでもない話」ときっぱり。複数場所の出場停止以上の処分は確実。調査結果にもよるが「悪質」と判断されれば、解雇の可能性も出てくる。