大関復帰を目指す関脇貴景勝(23=千賀ノ浦)が、優勝経験力士同士の一番を制して初日から3連勝とした。夏場所で初優勝した前頭朝乃山をはたき込んだ。

返り咲きとなる10勝以上へ“マジック”は7。現行のかど番制度となった69年名古屋場所以降、大関から陥落した場所で初日から3連勝した5人はいずれも大関復帰に成功しており、ついに確率を“100%”とした。貴景勝、横綱鶴竜ら5人が3連勝。かど番の大関豪栄道に土がついた。

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初優勝がまだ記憶に新しいホープ2人の顔合わせは、1・8秒で決着がついた。貴景勝は、相手がかち上げに失敗して出足が鈍った瞬間を、見逃さなかった。冷静に引いて、はたいて土俵に這わせた。「差されたら負ける。まわしを取られないように突き放していく。それだけ頭に入れていた」。四つ身を得意とする朝乃山に対して、まわしに触れさせない理想的な内容。夏場所の初優勝から勢いづいている相手だが、昨年の九州場所を制した優勝力士の“先輩”として貫禄を見せつけた。

過去の失敗を糧にした。夏場所の御嶽海戦では慣れないもろ差しで寄り切り、右膝の靱帯(じんたい)を損傷。その前に決まり手「寄り切り」で勝った一番は、昨年の名古屋場所までさかのぼり、相手は朝乃山。ともに、ビデオで見返さなくても脳裏に焼き付いている取組。「ああいう相撲をするとまたけがをする。それだけはやらないようにした」と反省を生かした。

休場した夏場所で、初優勝を果たした朝乃山の快進撃はテレビで観戦していた。「強い。もともと優勝してもおかしくないと思っていた」とその実力を認めていた。突き押し1本の貴景勝に対して、朝乃山は王道の四つ相撲とスタイルは正反対。175センチと小柄な自身より、身長は13センチ高い。「本格派でスケールが大きい。負けたくない相手」。幼少期から体格に恵まれず、反骨心が成長の原動力だった。ただ「いざ土俵に上がったら、感情は持ち込まない」。無心で臨んで結果を出した。

初日から無傷の3連勝。過去のデータに照らし合わせると、大関復帰の確率は100%となった。4日目は高校時代に国体で敗れた平幕の友風。プロでは初顔合わせ。「明日は明日。切り替えてやるだけです」。これ以上ないスタートダッシュに浮かれず、その日の取組だけに集中する。【佐藤礼征】