行司にとって、受難の一日となった。

結びから3番前の大関豪栄道-前頭朝乃山戦を裁いた木村玉治郎は、取組の最中、俵伝いに回り込もうとしたが、足がもつれたのか、土俵下に頭から転倒。朝乃山が上手投げで豪栄道に勝った勝負際を見極めることができず、起き上がって近くの審判に確認して軍配を上げた。

右の眉毛の上がザックリ割けて出血。止血したが患部を真っ赤に腫らしながら打ち出し後、両国国技館内にある相撲診療所で治療を受けた。「動きの流れで…(転倒した)。接触でも何でもないし、歩けるから大丈夫。ただ勢いで(転倒して)ぶつけただけですから」と早歩きする中、報道陣に対応。勝負は見届けられなかったが「何となく朝乃山(の勝ち)かなとは思っていました」と話した。その一番前で貴景勝が、つきひざで今場所初黒星を喫した際に、貴景勝の足に接触したかのようにも見えたが、それについては「分かりません」とした。

その1番後の大関栃ノ心-前頭玉鷲戦では、立行司の式守伊之助が、最後まで攻め込んだ玉鷲でなく防戦一方の栃ノ心に軍配を上げた。物言いがつき協議の結果、軍配差し違えで玉鷲の勝ち。立行司の宿命で打ち出し後、所属する高田川部屋の師匠で、幕内後半戦の審判長を務めていた高田川親方(元関脇安芸乃島)に連れられ八角理事長(元横綱北勝海)の元へ進退伺に向かった。これを慰留された伊之助は「(理事長からは)頑張れとは言われました。何で間違えたのか、ビデオを見ます。すいませんでした」と報道陣にも頭を下げた。今年1月の初場所から41代式守伊之助に昇格。立行司になってから初めての差し違えに、恐縮しきりだった。