西前頭11枚目の炎鵬(24=宮城野)が、中学の同級生の前頭輝から初白星を挙げ、1敗を守った。

関取最小の168センチ、最軽量の98キロながら、素早い動きと足取りなどを駆使し、192センチ、163キロの輝を終始攻め立て、最後は押し出し。通算100勝の節目を、7月の名古屋場所の初顔合わせで敗れた同級生に雪辱して飾った。関脇貴景勝が敗れ、前頭隠岐の海が単独トップに立った。

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体格差を逆手に、上下の動きで揺さぶった。炎鵬が立ち合いから懐に潜り込んで、輝を突き起こした。間合いを取って再び下から攻めると、相手は腰高に。極め付きは輝の右足への足取りだった。驚いて腰が引けた瞬間を見逃さなかった。一気に前に出て押し出し。「足取りにいった時、相手が慌てていたので逆に冷静に取れた」。多彩な連続攻撃の15秒1を振り返った。

輝とは金沢市立西南部中の同級生で、体格に恵まれた輝は中学卒業後、一足早く相撲界に入った。一方の炎鵬は金沢学院東高、金沢学院大を経て、7年遅れて入門。幕内力士と新弟子の立場上、最初は敬語を使ったが、輝から「やめろよ、気持ち悪い」と言われた。以来、巡業などでは定期的に食事に出掛けている。

初顔合わせの先場所は完敗したが、8月に札幌市巡業でも2人ですし店に行った。以前は番付上位の輝が必ず支払ったが、今回は炎鵬が出した。それでも「勝負は始まっている」と相撲の話はしなかった。「意識しないように思っても意識する」という特別な存在。「素直にうれしい。少しは成長できたかな」。対戦成績でも追いついて、晴れて同じ土俵に立ち、笑顔を見せていた。【高田文太】