昨年11月の九州場所限りで引退した元前頭里山の引退、年寄佐ノ山(38=尾上)襲名披露大相撲が28日、東京・両国国技館で開催された。

断髪式前には、6歳の長男・瑛汰君とともに2人で最後の土俵入り。初っ切りの後には最後の取組として、やはり瑛汰君と対戦。黒房下に押し出され、集まったファンをわかせた。

十両の取組後に断髪式が行われ、約300人の関係者がはさみを入れた。大相撲評論家の舞の海秀平氏、好角家で漫画家のやくみつる、放送作家の鈴木おさむ、お笑い芸人のあかつらが、次々と別れを惜しみながら土俵へ上がった。

最後の協会関係者では、出羽海一門で日本相撲協会理事の春日野親方(元関脇栃乃和歌)、出羽海親方(元前頭小城乃花)、山響親方(元前頭巌雄)、また親交があり29日に同所での引退相撲を控える荒磯親方(元横綱稀勢の里)や安治川親方(元関脇安美錦)、現役力士では鶴竜、白鵬の両横綱や大関豪栄道、同じ鹿児島・奄美出身の幕内力士・明生らもはさみを入れた。最後に師匠の尾上親方(元小結濱ノ嶋)が止めばさみを入れた。

鹿児島商高、日大を経て04年春場所で初土俵。幕内6場所、十両41場所と関取として47場所を務めた。通算493勝の白星を35手の決まり手で奪った業師は断髪式を終え、整髪になると「(今までと)違う。夢心地、夢を見ているみたい」と鏡を見やりながら不思議そうな顔をした。約300人がはさみを入れた断髪式は、東西南北と4方向に向きを変えながら行ったが「全部の方向を回って、こんなにお客さんが来てくれたんだ、とうれしさと驚きがあった。相撲界に入って思い入れがたくさんある人たちばかり。名前が呼び上げられるたびに、思い出がよみがえってきた」と感慨深げに話した。

佐ノ山親方として次の仕事が待っている。「いろいろな人に支えられているのだから感謝の気持ちを忘れないこと。相撲を教える前に、そこです」。私的な? 夢もある。この日、一緒に土俵入りや取組もあった瑛汰君のこと。既に相撲を始めており「(自分の)意志を継いでくれたら。横綱を目指して頑張ってほしい」と目を細めていた。