大相撲の大関貴景勝(23=千賀ノ浦)が、九州場所(10日初日、福岡国際センター)に出場する。取組編成会議を翌日に控えた7日、福岡・篠栗町の部屋で師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)が明言。秋場所千秋楽の優勝決定戦で肉離れした左大胸筋のけがで、出場が懸念されていたが、稽古後、師匠に「違和感はない」と伝えた。昨年初優勝を遂げた九州場所で、けがからの再起を図る。

出場の決断はスムーズだった。稽古後、九州場所出場について貴景勝と千賀ノ浦親方が交わした会話は二言、三言。師匠は「出ますよ。胸の違和感もほとんどないってことで」と代弁した。貴景勝は2日の二所ノ関一門の連合稽古で左大胸筋に違和感を訴え、相撲を取る稽古を回避。回復の遅れも懸念されたが、前日6日には追手風部屋に出稽古し、関取衆を相手に10番以上の番数を重ねた。千賀ノ浦親方は「いい仕上がり。自分の相撲を取れればいい成績を残せる」とゴーサインを出した。

部屋の稽古打ち上げとなったこの日、貴景勝は“総仕上げ”として同部屋の幕内隆の勝と三番稽古を行った。計10番で7勝。頭をつけてじっくり攻める相撲が目立ち、千賀ノ浦親方は「押し切れないと、必ずあの形になる。自分なりに考えてやっている」と説明。立ち合いの当たりから突き放せない展開を想定する、貴景勝の工夫を評価した。さらにおっつけなどで、不安視されている左腕を駆使。3日後に迫った本場所に向けて回復を印象づけた。

昨年は小結で13勝を挙げて初優勝。今年3月に昇進を決めた大関とりの起点となった。福岡入り後、初めて稽古を行った10月29日には「人生のターニングポイントになった場所。今年も自分にとっていい分岐点になるようにしたい」と話していた。目標に掲げる2度目の優勝を果たせば、今度は綱とりの起点に-。完全復活を果たした先に、最高位が見えてくる。【佐藤礼征】

◆貴景勝のけがの経緯

▽9月19日 関脇陥落した秋場所で12日目に10勝目をあげて、1場所での大関復帰を決める。

▽同22日 12勝で並んだ御嶽海との優勝決定戦に敗れ、その取組の際に左大胸筋を負傷。

▽同23日 都内の病院でMRI検査を受け「左大胸筋肉離れ」で加療6週間と診断される。

▽10月1日 赤黒い内出血が左胸周辺に広がったまま、都内の部屋で稽古を再開。四股やスクワットなどの基礎運動で体を動かす。

▽同5日 金沢・七尾市で始まった秋巡業を初日から休場。

▽同16日 静岡・浜松市で秋巡業に合流。

▽同29日 福岡入り後、初めて稽古を行う。

▽同30日 ぶつかり稽古を再開。

▽11月1日 二所ノ関一門の連合稽古で負傷後初めて関取衆と相撲を取る。

▽同2日 同連合稽古で左胸に違和感を訴え、相撲を取らず。

▽同6日 追手風部屋に出稽古し、幕内大栄翔らと計13番取る。