大関に復帰した貴景勝(23=千賀ノ浦)が、秒殺相撲で復活ののろしを上げた。今場所の自身最速となる2秒で東前頭2枚目妙義龍(33=境川)を押し出し、4勝3敗と白星を先行させた。先場所千秋楽で負傷した左大胸筋の状態が不安視され序盤戦は波に乗れなかったが、ようやく本来の強さを発揮した。小結朝乃山ら5人の2敗勢が、1敗の横綱白鵬を追う。

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貴景勝の電車道が、ようやく出た。立ち合いで突き放すと、頭から当たった。今場所の白星で最速となる2・0秒の完勝。初日から支度部屋で報道陣に背を向け緊張感を漂わせていたが、この日は報道陣に応対。「集中して毎日毎日、自分の中で後悔しないようにやっていた」と平常心を強調した。

場所前の稽古では左胸の影響について「的確な押しをしたら大丈夫」と話していたが、2日目の朝乃山戦、6日目の玉鷲戦と左からのいなしが不発。この日の朝、千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)は「消極的な部分がある」と指摘したが、連敗中の一番で迷いのない一直線の踏み込みを披露した。八角理事長(元横綱北勝海)も「貴景勝はいくしかないから」と、攻撃的な姿勢を評価した。

再び大関の看板を背負い、覚悟を示す場所だ。新大関だった5月の夏場所では、4日目に負傷した右膝の影響で休場。大関としての責任を果たせなかった。「その再スタートというのはある。7月(名古屋場所)まで引きずってしまったので」。幕内最年少の若き大関は「今年はありがたい圧(プレッシャー)がある。大関に戻ったからには成績をあげないといけない」と地位の重みに感謝した。

単独トップの白鵬とは2差だが、場所は半分も終わっていない。「今の成績で『優勝したい』は顔じゃないけど、諦めずにやれば優勝以上のものがつかめるかもしれない。毎日毎日、いい準備をするだけ」と言葉に力を込める。会心の勝利で、表情にも生気が戻ってきた。【佐藤礼征】