悲願の関取復帰が、いよいよ現地味を帯びてきた。大関経験者で、番付を序二段まで落として以降、4場所連続勝ち越しで順調に関取復帰の道を歩む、西幕下10枚目の照ノ富士(27=伊勢ケ浜)が、全勝対決で東幕下45枚目の平戸海(19=境川)に小手投げで勝ち、無傷の6連勝とした。13日目に予定される、もう1人の全勝力士で西幕下51枚目の対馬洋(26=境川)に勝って7戦全勝とすれば、再十両は確実になる。

身長で約15センチ、体重で70キロほどの差がある小兵に、少しばかりてこずった。右を深く差され、左は前まわしを引かれたまま、左から何とか抱えこみ守勢に回された。それでも腰の重さで決定的な劣勢にはならず、最後は相手が右下手を深く差しながら出るところを、左から巻いた小手で豪快に投げ飛ばした。

攻め込まれた場面を「落ち着いてましたんで」と短く振り返った。2度ほど足が俵にかかりかけたが「前だったら普通で出てる(土俵を割っている)。ちょっとずつ下半身も、ちょっとずつだけど粘りがでてきているかな。『危なかった』というのは、なくなってきている」と懸念される膝の状態も良好のようだ。

自分の1番前で、弟弟子でやはり5戦全勝だった東幕下12枚目の翠富士(23)が敗れ、同部屋優勝決定戦の可能性は消えた。今年最後となる7番相撲の相手は、その弟弟子を破った対馬洋。勝てば10場所ぶりの関取復帰が確実視される大一番を前に、周囲の期待はがぜん、高まる。その空気を察しつつも「最初から自分の中で決めていたこと。(今場所での復帰を)できたらできたでいいし、できなかったら次の場所がある、というのは自分の心の中にある。期待されているのはありがたいけど」と平常心を言い聞かせた。最後に残された大一番も「思い切っていく。勝っても負けてもいい。とりあえず自分の相撲、というか出来ることをやって終わらす」。取材対応中は終始、崩さないままだった厳しい表情を、2日後には喜びの笑みに変える。