大関貴景勝(23=千賀ノ浦)が、在位3場所目で大関として初めて勝ち越した。

東前頭5枚目碧山(33=春日野)の突き押しをものともせず、一方的に押し出し。5連勝で優勝争いに食らいついた。新大関だった5月の夏場所から半年。けがとも闘いながら区切りの白星を挙げた。3敗は貴景勝と平幕2人。1敗を守ったトップの横綱白鵬を、2敗の小結朝乃山が追走する。

   ◇   ◇   ◇

上位陣の負傷や休場が目立つ場所で、貴景勝が看板力士として土俵を引き締めている。6日目までに3敗して存在感を出せなかった序盤戦がうそのように、内容を伴う5連勝で給金を直した。

理想の展開だった。自身より約15センチ高く、30キロ重い巨漢を下から何度も突き起こし、最後は相手を引かせた。前日の取組で左目が相手の突きと接触。この日も左目下は内出血で紫色に変色していたが「全く大丈夫」と、血走った左目を力強く見開いた。

大関として責任を果たせないもどかしさがあった。「5月に上がって、そこから(勝ち越しまで)半年かかった。少し長かった」。14年秋場所の初土俵から休場は27回しているが、そのうち23回は今年。栄光も苦難も経験したこの1年で、土俵に立てるありがたみが身に染みた。「1、2年前は15日間やりきるのが当たり前だった。今年1年で本場所に出られる喜びが分かった」。八角理事長(元横綱北勝海)も「(大関は)言い訳ができない番付。貴景勝にとってはいい意味でも悪い意味でも相当な1年だったろう」と心境を推し量った上で「そんな中でけがにも打ち勝ってきた」と、評価した。

節目の1勝としながら、一息つく様子はなかった。「ここで気を抜いたらかっこわるい。残りも自分の100%を出せるように、しっかり準備するだけ」。1年納めの場所で、遅まきながら主役候補に躍り出てきた。【佐藤礼征】