横綱白鵬(34=宮城野)が令和初、日本国籍取得後初の優勝に大きく前進した。小結遠藤に強烈なかち上げを見舞うなど、激しい取り口の末にはたき込んで11勝目。1敗で単独首位を維持。ただ1人、星の差1つで追っていた小結朝乃山が3敗目を喫した。これにより、13日目で3敗の朝乃山と平幕正代が敗れ、白鵬が勝てば、史上最多を更新する4場所ぶり43度目の優勝が決まる。

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白鵬は立ち合いかち上げると、1度引いたが二の矢、三の矢を繰り出すように右と左で張った。パタリと前に落ちた遠藤は、鼻の上を押さえながら土俵の上で数秒動かず。“KO”されたようにもみえた。「まず(相手を)起こしてから攻めたいというね。最終的にはたき込みになりました」と白鵬。取組直前の土俵下で、1差で追う朝乃山が敗れる場面を見ていたが「自分の一番だけに集中した」と、平常心を貫いた。

若手の朝乃山らと繰り広げる賜杯レースが、早々に決着する可能性が出てきた。3敗の朝乃山と正代が負けて白鵬が勝てば、白鵬にとっては15年初場所以来で自己最速に並ぶ、13日目での優勝決定となる。「(競った優勝争いは)見ている方は場所として盛り上がるが、やっている方は1日も早く無事で千秋楽まで…と思っている」。

度重なるけがの影響により今年5場所で皆勤は2度だけと、不本意な1年だった。場所後には九州の部屋宿舎近くで滝行を行う予定。「自然に恩返しというか、何かものに頼りたくなるんでね」。現役続行の目安としている20年東京五輪へ。新年を万全で過ごすために、自然の力も借りて心と体を清めるつもりだ。

優勝が目の前に迫っても「一番一番です」と冷静だった。新元号「令和」では初、そして9月の日本国籍を取得後初めての日本人優勝へ。1年納めの場所で、大横綱が大きな区切りを迎えようとしている。【佐藤礼征】