平成の大横綱が、令和の大相撲にも新たな1ページを刻んだ。横綱白鵬(34=宮城野)が史上最多を更新する43度目の優勝を飾った。

2差で追っていた平幕の正代が敗れ、小結朝乃山は3敗を守ったが、自身は関脇御嶽海を外掛けで下して13勝目として、勝利で決めた。新元号「令和」で、そして9月に日本国籍を取得後初めての優勝。34歳8カ月での優勝は、年6場所制となった58年以降では4位の年長記録となった。

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平成で42度の優勝を積み上げた白鵬が、破顔した。「令和元年に間に合って良かった」。けがの影響で令和最初の場所となった5月の夏場所は全休、先場所も2日目から休場した。今年5場所で皆勤したのは2場所だけ。「3月の(上腕)二頭筋断裂、秋場所の小指の骨折を乗り越えてきた」と、かみ締めるように何度もうなずいた。

朝乃山が3敗を守り、この日で優勝を決めるには勝利が条件だった。相手は先場所優勝の御嶽海。張り差しから右上手を取って、外掛けで相手を裏返しにした。「勝って優勝を決めるのはいいもの。終わってみればね」。2日目に初黒星を喫し、順調な滑り出しではなかった。3日目の朝乃山戦では張り差しから左四つ。絶対的な右四つを持つ相手の持ち味を封じ、完勝した。かち上げなどの激しい取り口も駆使し、初黒星から12連勝と、終わってみれば独走状態だった。

9月に日本国籍を取得後、初めて抱く賜杯になる。“日本人初優勝”について問われると「そうですね。うれしいです」と目を細めた。国籍変更は引退後、日本相撲協会に残り、親方として後進の育成にあたるため。国籍取得後、「自分の(生まれた)国を愛せるから日本を愛せる。両親、兄弟を愛せるから、この国の人を愛せると思います」と言った。今年引退した弟弟子には「親の足を洗ってみなさい」と伝えたことがある。「自分を育ててくれた人が支える足に触れることで、その重さを実感できるから」。受け取った愛を知り、愛で返すことの重みを知る。将来的に親方として角界への恩返しを実践していく覚悟だ。

九州では横綱千代の富士に並ぶ最多9度目の優勝(年6場所制以降)。「ひとつ大先輩に近づいた。先輩方は偉大ですね」。現役続行の目安としている20年東京五輪は約8カ月後に迫った。今年の9月、明治神宮で奉納土俵入りをした際に、五輪のシンボルを綱の模様であしらった新しい化粧まわしを披露。「これが最後(の化粧まわし)になるかもね」。残りの現役生活で、白鵬は新時代にも名前を残していく。【佐藤礼征】