大関貴景勝(23=千賀ノ浦)が上位陣が不振を極める中、意地を見せた。2横綱、1大関を破っている東前頭筆頭遠藤にまわしを取られながら、土俵際で逆転の突き落としを決めて辛勝。遠藤の横綱、大関総なめを防いだ。

白鵬が休場、鶴竜が3つの金星配給と両横綱が精彩を欠く状況で、次代の横綱候補が1敗を死守。全勝は北勝富士ら4人全員が平幕で、混戦場所となっている。

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まわしを奪われた絶体絶命の貴景勝が、白星をもぎ取った。2横綱、1大関撃破と絶好調の遠藤を押し込めず、前みつを取られて食い下がられた。いなし、引きでも離れない。組まれる寸前の苦しい土俵際。不意に右足が崩れた相手を1発突くと、遠藤はバランスを崩したようにたちまち横転。辛くも1敗を守り、支度部屋では思わず付け人に「危なかった」と吐露した。

薄氷の1勝には、看板力士としての意地があった。遠藤に敗れれば、平幕力士に横綱、大関が総なめされる屈辱的な展開。「横綱と大関が4タテを食らうのは非常にまずい」。強い責任感が働いた。

勝利の中にも反省を忘れなかった。この日は土俵際の逆転劇。組まれれば、俵で無理に残ってしまう危険性もはらんでいた。支度部屋では開口一番「(無理に残ると)またけがしますよ」とポツリ。新大関だった昨年夏場所では慣れないもろ差しで寄り切り、右膝は悲鳴を上げた。「勝たないといけないけど…。(内容は)いいところも悪いところもあった」。けがのリスクとは常に隣り合わせ。昨年経験した負傷が、危機管理の意識を高めている。

白鵬が休場して、鶴竜と豪栄道はすでに3敗となった。大関以上の白星先行は貴景勝のみも「まだ4日目。いろんな人のことを考えている余裕はない。人は人、自分は自分」。昨年末はインフルエンザで寝込んだが、今場所は現時点でその心配を感じておらず「少し楽です」。19年の主役が、20年最初の土俵を締める。【佐藤礼征】