阪神・淡路大震災が起きた95年1月17日に生まれた東前頭14枚目・照強(25=伊勢ヶ浜)が、無傷の5連勝を飾った。

千代丸(九重)をもろ差しから鮮やかな下手投げ。白鵬に続き、鶴竜も休場と昨年秋場所に続く横綱不在となった混戦場所で、幕内で2番目に低い身長169センチの小兵が主役候補に浮上。初場所は過去4年連続初優勝力士が誕生しており、照強もひょっとしたらひょっとするか。

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身長169センチが武器だった。「小さくてイヤだなんて思ったことはない。小さいと、相手がイヤでしょう。190センチあったら逆に相撲取れないッスよ」と照強。千代丸のもろ手突きをかわすように懐に飛び込み、揺さぶって前に出ながらの下手投げが決まった。

「ああなったら(千代丸は)腹出してくるんだろうな、と。その腹に乗っからないように。結構、前に圧力かけたんで思い切りやるしかない。小さいんで思い切ってやらないと」

25年前、阪神・淡路大震災が発生して、約15時間に生を受けた。誕生日=震災の日。もちろん、本人に被災した記憶はないが「うれしいことだけじゃないのが誕生日」と話す。「母親は大変だったと思う」。当時のことは家族、周囲から聞いてきた。力士になり、必然的に初場所中にこの日を迎える。「やはり意識する。特別な日です」。

ひとつの目標が幕内で迎えることだった。「幕内で初めてはひとつの目標。まずはそこを目指していたんで」。25年たっても、震災の痛みを風化させてはいけない思いを強く持つ。「幕内だとテレビ(地上波)で必ず映るでしょ。淡路の人だけじゃなく、全国の人に見てもらいたい」。体は小さくても、気力と根性で大きな相手をなぎ倒す姿が、勇気になると信じている。

12勝した昨年名古屋場所に並ぶ、自己最多の初日から5連勝。当時と比べ「今回の方が調子いい。前は気づいたら勝てた感じだが、今は意識して勝っている。前より気持ちに余裕を持って相撲がとれている」。精神面から体も変わった。以前は「飯の時間なんてこなけりゃいいのに」と思うほど食べられず、場所中は自然に体重が落ちた。今はしっかり食べて維持できる。「淡路島のたまねぎ、最高です」と郷土の名産にも支えられる。

初場所は過去4年連続で初優勝力士が誕生している。まだ序盤5日間を終えただけに、照強も「まだ10日もあるし、勝ち越しもしていない。気持ちを入れ直して頑張りたい」。今日17日、25歳の誕生日も静かに黙とうして迎える。【実藤健一】

○…照強の師匠、伊勢ヶ浜親方(元横綱旭富士) 必死にやっている。(震災の日に生まれ)しこ名もそういう願いがこめられている。みんなの励みになれば。

照強翔輝(てるつよし・しょうき)

◆本名 福岡翔輝。しこ名は「周囲を強く、明るく照らすように」との願いがこめられている。

◆出身 1995年(平7)1月17日、兵庫県南あわじ市。

◆経歴 小学1年から柔道。4年時に飛び入り参加したわんぱく相撲をきっかけに相撲を始める。中学卒業後、伊勢ケ浜部屋に入門。身長167センチで当時の第2新弟子検査に合格し、10年春場所初土俵。16年九州場所、西幕下9枚目で優勝し、17年初場所で新十両昇進。19年春場所新入幕。同年名古屋場所、12勝3敗で敢闘賞を受賞し、翌秋場所の東前頭9枚目が最高位。

◆サッカー好き 中学に相撲部がなくサッカー部に所属しGK。実家で飼い始めた愛犬のゴールデンレトリバーに(クリスティアノ)ロナウドと命名。

◆サイズ 169センチ、120キロ。