土俵際の踏ん張りで、現役関取最年長で東十両11枚目の豊ノ島(36=時津風)が、連敗を2で止め今場所2勝目(4敗)をマーク。現役4位の通算700勝に王手をかける白星でもあった。

過去1勝1敗の同8枚目旭大星(30=友綱)との一番は、左を入れようとする豊ノ島を懐に入れさせまいと、旭大星が突き押しで応戦。豊ノ島も押し、いなしで応じ、土俵中央での激しい攻防が続いた。しばらくして豊ノ島が左をのぞかせたが、これを防いだ旭大星に攻勢に出られ、正面土俵まで追い込まれた。ここからベテランの意地を見せる。右に体を開きながら、右から肩すかしを引く。無人の正面土俵に前のめりに出された旭大星の左足つま先が土俵を割った。両足を俵に詰まらせた状態で懸命に踏ん張り、体を反らせながら勝った瞬間を見届けた豊ノ島だった。

勝負が決まった場面は「見えた」というが、それ以上に「『出ろ、出ろ!』ってね。念だね。(旭大星が土俵を割らなかったとして)あそこからの展開があったとしても立て直せたと思うけど、念だね、念」と何度も心の中で念を入れたことを笑いながら話した。

今場所初勝利の3日目美ノ海戦も、同じような勝ち方。まさに薄氷を踏む思いの土俵が続く。当然、相撲内容に納得はいかない。「昔は押し切れたけど押し切れない。立ち合いは踏み込めているけど、前に力が伝わらないから不安だね。あんな相撲を取ろうとは思ってないけど、圧力がないのかな。元々、受けの相撲だけど、前に攻める意識を持たないと悔いが残るからね」と、もどかしさを口にした。

ただ、現状では「今できる圧力をかけるだけ」と持てる力は振り絞っている。足のケガなど満身創痍(そうい)ではあるが、それは口にせず「今は今」と、持っている引き出しを全て出しながら連日の土俵を務めている。「とりあえず白星が一番、気持ちを高めてくれる」と白星を何よりもの良薬に、白星を重ねていく。