大相撲初場所で幕尻として20年ぶり史上2度目、奈良県出身力士として98年ぶりの優勝を果たした平幕の徳勝龍(33=木瀬)が、千秋楽から一夜明けた27日、都内の部屋で会見を行った。

前日は涙と笑いが入り交じっていたが、この日は終始笑顔。上位陣と対戦する見込みの春場所(3月8日初日、大阪・エディオンアリーナ)を前に、大好きなプロ野球阪神との共演を夢見た。

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寝不足を感じさせない笑顔がまぶしかった。会見に出席した徳勝龍は「今も自分じゃないような、ふわふわした感じ。昨日は興奮して眠れなかった」と吐露。LINEなどで祝福のメッセージは500件以上届いた。「新聞で主役になる日がくるとは思わなかった」。スポーツ紙の1面をジャックしても、快挙にまだ実感が湧いていない様子だ。

会見後に、まさかの逆指名が飛び出した。前日は「“関西魂”で笑かそうと」ユーモアたっぷりの優勝インタビューで相撲ファンを魅了。お笑い動画鑑賞が趣味なだけに「(吉本)新喜劇から出演オファーがくるのでは?」と報道陣に振られると「それよりも野球でしょ」と自ら切り出した。

父青木順次さん(73)と親子2代で阪神ファン。自身も野球経験者で、相撲と並行して小2から小6まで習っていた。本塁打性の打球を打っても「足が遅くて2塁で必ず止められる」という鈍足強打の4番捕手として、市大会で優勝するなど活躍。中学から相撲一本に絞ったが、角界入り後も特注のキャッチャーミットでキャッチボールを楽しむこともある野球好きだ。

異例の形で阪神との共演を熱望する。「始球式より(捕手として)球を受けてみたい。(現役選手の球は)速すぎて取れないけど、今の亀山さんの球なら取れるかも」。ヘッドスライディングなどの全力プレーで活躍し、新庄剛志氏とともに「亀新フィーバー」を巻き起こした元阪神外野手の亀山努氏(50)が小さい頃のスターだった。ちなみに今の注目選手は、昨年夏の甲子園を制した履正社高からドラフト2位で入団した井上広大外野手。「(1軍の)試合に出るか分からないけど、すごい体してますよね。甲子園から見ていました」と熱視線を送った。

早くも来場所の活躍が期待されるが「今はゆっくり、温泉とか入りたい」。幕内上位まで番付を上昇させる見込みの春場所へ、充電期間に入る。【佐藤礼征】

◆徳勝龍誠(とくしょうりゅう・まこと) 本名・青木誠。1986年(昭61)8月22日、奈良市生まれ。家族は千恵夫人。3歳から柔道、小学2年から野球を始め、相撲は4年から。少年野球は4番捕手で6年時に橿原市の大会で優勝。父順次さん、母えみ子さんも阪神ファン。明徳義塾高-近大から角界入り。20年初場所、幕尻で初優勝。