東前頭9枚目隆の勝(25=千賀ノ浦)が玉鷲を押し出して1敗を守り、関取としては自己最速の勝ち越しを決めた。無観客開催の中、同部屋の大関貴景勝と稽古を重ね、実力を伸ばしている押し相撲のホープが無欲で突き進む。

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また生きのいい力士が出てきたな、と感じさせる隆の勝の相撲だった。優勝した頃に比べれば力が落ちたとはいえ、玉鷲の突き押しは強烈だ。しかも初顔合わせ。それでも臆することもなかった。当たってのど輪で押し込まれ下がったが、崩されてはいない。右四つでも取れる強みで、その右からすくって体を入れ替えた。一見すると劣勢のように見えるが、相撲に一連の流れがある。今場所好調の要因だろう。当たりが強いのは、部屋で貴景勝と稽古できるのが大きい。身長の低い大関だから、稽古で自分もより重心を低くというのが体に染みついているはずだ。その稽古が本場所で生かされている。新入幕の琴ノ若も将来性を感じさせる1人。上位を突き上げるような新しい力が幕内の下位にいるのも、バランスが取れて全体的にいい流れだと思う。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)