頭から当たって御嶽海を一蹴した8日目あたりから鶴竜の相撲にリズムが出てきた。

悪い時はこわごわと取って、いつ悪い癖の引きが出るんじゃないかという相撲が、今は立ち合いで踏み込んで、迷いなく手も足もよく前に出している。自分の立ち合いはこれだ、というのを思い出したようにみえる。正代戦も狙った左前みつは取れなかったが下から起こして突き放し、まわしにこだわらずに出た。稽古場で負けない相手だからこそ、余計に本場所では気を抜けない。精神的にもスキを見せなかった。

独走すると思われた白鵬が10日目に負けて1差になった。横綱なんだから無欲で-などと思わず、欲を出して最後まで優勝争いに持ち込んでほしい。千秋楽結びの横綱対戦はここ3場所ない。鶴竜にとってその一番が、優勝をかけた白鵬との大一番になるよう白星を積み重ねてほしい。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)