東前頭18枚目の琴ノ若(22=佐渡ケ嶽)が、山形・尾花沢市出身で実父の佐渡ケ嶽親方(51=元関脇琴ノ若)と、祖父の第53代横綱琴桜もなし得なかった新入幕勝ち越しを決めた。

祖父は6勝、父も7勝で負け越し。「過去のことは知りませんでしたが、7番目を勝ってから師匠に『勝ち越してないんだぞ』と聞きました。やっと勝ち越せたのでホッとした」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

岩手・盛岡市出身の西前頭14枚目錦木(29=伊勢ノ海)を相手に右四つ左上手で押し込むと、左からの上手出し投げ。王手をかけてから4連敗中だったが「師匠にも『初日の気持ちでやれ』と言われて、吹っ切れてとれました。負けても、良い内容なら次につながると思って、思い切りいきました」。持ち味の前に出る相撲で結果を出した。

部屋の関取衆や付け人への感謝も忘れてはいない。十両で優勝争いをしている琴勝峰(20)ら同世代だけでなく、大関経験者の幕内琴奨菊(36)の胸も借りて強さを増してきた。「菊関に稽古をつけてもらって番付を上げていただいたので、まだまだ上があるのでこれからですけれど、少しは恩返し出来たかなと思う」。感謝の意を伝え聞いた琴奨菊も「うれしいねえ。まだ頑張ろう」と若手に負けない刺激も受けていた。

新・琴ノ若としての躍進は始まったばかり。「明日も来場所もあるので、気を引き締めて頑張ります」。喜ぶのは千秋楽を終えてからだ。【鎌田直秀】