青森・中泊町出身で西前頭5枚目の阿武咲(23=阿武松)が、初の殊勲賞を受賞した。優勝した横綱白鵬を10日目に破り、自身2つ目の金星。千秋楽は西前頭3枚目の御嶽海を押し出しで圧倒し、9勝6敗で無観客場所を締めた。

三役返り咲きに挑む夏場所(東京・両国国技館)に向けても手応えを得た。また、福島市出身で西十両2枚目の若隆景(25=荒汐)は旭大星を押し倒して10勝目を挙げ、来場所の再入幕を確実にした。

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阿武咲が会心の相撲に笑顔を見せた。御嶽海よりも低く鋭い立ち合い。下から両手で突き上げると、引いた相手を一気に土俵下に押し出した。「思い切っていこうと思った。それだけ。腰の使い方だったり、試してきたことが実になってきた場所だった。いろいろな収穫があった」。相撲の技術だけでなく、食事面なども改善を図って復活を期してきただけに、9勝した内容に満足した。

10日目には白鵬を完璧な内容で押し出し、土をつけた。初日からの連勝を止めたことも評価され、初の殊勲賞を受賞。関脇正代も横綱白鵬を破っていただけに「もらえると思っていなかった。正代関かなと。でも、自分の中でもすごく大きい1歩だと思います」。挑戦3度目での初勝利が自信にもつながった。

18年九州場所の新小結で8勝。さらなる飛躍の期待が集まる中、翌19年初場所で右膝後靱帯(じんたい)損傷の大ケガを負った。十両まで陥落してからの再出発。中学時代からの宿敵で同学年の貴景勝が先に大関に昇進する悔しさを味わいながら、少しずつ歩みを進めることしか出来なかった。前日14日目には貴景勝に敗れたが、来場所はリベンジ出来る前頭上位に上がって、三役復帰にも挑む。「今場所は出し切りましたし、ケガなく終わったことも良かった。今の段階のさらに先があるので、そこに向けてという感じです」。次期大関候補への階段を、1歩1歩上っている。【鎌田直秀】