日本相撲協会は4日、電話での持ち回り理事会を開き、新型コロナウイルス感染拡大の影響により2週間延期して24日に初日を予定していた大相撲夏場所(東京・両国国技館)の中止を決めた。本場所の中止は八百長問題の影響を受けた11年春場所以来、9年ぶり3度目。7月19日に初日を予定していた名古屋場所の開催会場を、名古屋市のドルフィンズアリーナから両国国技館に変更することも発表した。無観客での開催を目指す。10月の秋巡業も中止するなど、角界が大きな決断を下した。

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開催を視野に入れてきた角界が、ついに決断を下した。相撲協会は夏場所の中止、名古屋場所の会場変更を決定。八角理事長(元横綱北勝海)は「緊急事態宣言の延長が発令されたことを鑑み、ファンの皆様並びに関係者の皆様の健康と安全を確保するため、5月場所の開催中止を決定いたしました」とコメントした。

協会は夏場所の開催可否について、政府の要請に沿って対応する構えを示していた。この日、政府発令の緊急事態宣言が31日まで延長。予定していた日程と重なり実施は厳しくなった。角界では4日までに、高田川親方(元関脇安芸乃島)や十両白鷹山ら計7人の感染者が判明。しかし芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「あくまでも政府の緊急事態宣言が延長されたということを受けて中止に至ったということです」と説明した。

ドルフィンズアリーナで開催されてきた名古屋場所は、今年は両国国技館で開催することも決まった。力士ら約900人の協会員の移動や、1カ月に及ぶ長期滞在による感染リスクを避けるための措置だ。2週間延期した日程はそのまま。八角理事長は「特別開催としまして7月19日から8月2日、東京で行うこととし、両国国技館での無観客開催を目指す所存です」と春場所以来の本場所開催を視野に入れた。

本場所の間隔が空くことで、力士らは調整に苦戦することが予想される。しかし「これでケガをしている力士は万全で出てくる。土俵は面白くなるかもしれない」と期待する親方もいるなど、明るい材料もある。八角理事長も「開催できた暁には、精いっぱいの迫力ある相撲をご覧いただけますよう、これからも取り組んで参ります」とファンへ約束。今は協会が一丸となって、本場所開催の時を辛抱強く待ち続ける。

◆過去の場所の変則開催と中止 終戦直前の1945年夏場所は当初5月に予定されていたが、空襲のため延期。6月に一般に非公開とし、旧両国国技館に傷痍(しょうい)軍人や関係者らを招待して7日間実施した。46年は被災した国技館の修復が遅れ、夏場所を中止。近年では2011年2月に発覚した八百長問題で、実態解明などを優先させるため、同年春場所実施を断念し、65年ぶりに本場所を中止した。同年夏場所も興行ではなく技量審査場所として無料公開で開催した。