大関朝乃山(26=高砂)が待望の初日を出した。力強い突き押しがウリの平幕の北勝富士を、寄り倒しで下して3連敗から脱出。3連敗を喫した前夜、師匠の高砂親方(元大関朝潮)と一緒に食事をして気持ちを切り替えた。横綱不在の場所で後れを取ったが、ここから巻き返しを狙う。三役以上で唯一無傷だった関脇正代が、平幕の照ノ富士に負けて初黒星。勝ちっぱなしは阿武咲と新入幕の翔猿の平幕2人だけとなった。

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勝負を決めた朝乃山に明るい表情はない。むしろ「まだまだ」と言わんばかりの厳しい顔つきだった。2日目から3日連続で取材に応じなかった。横綱不在の場所で初日から3連敗。ようやくの初日に、満足するはずがなかった。

朝乃山らしい、前に出る力強い相撲だった。立ち合いで右四つにはなれなかったが、引いた北勝富士に対して、しっかりと前に出てついていった。はたきにも慌てることなく、体を寄せて右を差した。土俵際で粘られたが生命線の右は差したまま。最後は左手で豪快に土俵下に突き飛ばした。

3連敗を喫した前夜は、高砂親方と食卓を囲んだ。弟子を気遣った師匠の計らいによるもので、たわいもない話に花を咲かせた。精神面を気にした師匠から「大丈夫か?」と問われ「大丈夫です」と落ち込んだ様子は見せず。高砂親方は「サバサバした感じだった。これなら大丈夫と思った」と安心したという。師匠はこの日の相撲を「3日間は自分の形になれなかった。今日は右を差せたのが勝因」と評価。連敗を引きずることなく、師匠も納得の相撲内容で白星を挙げた。

後れを取ったとはいえ、残りはまだ11日ある。師匠からは「勝ち運に乗ってくれば流れが変わる。優勝争いを最後まで盛り上げる意味でも大関らしく千秋楽まで務めて欲しい」と期待された。場所前には「引っ張っていかないといけない立場」と大関の自覚を口にしていた。横綱不在の秋場所。ここからその自覚を体現する。【佐々木隆史】

▽錦戸審判長(元関脇水戸泉)「朝乃山は、まわしにこだわらなかった。誰が優勝してもおかしくない状況。朝乃山もここから勝っていけば可能性がある」