貴景勝に、らしさが戻ってきた。同じように重心の低い妙義龍を常に正面に置いて、慌てることなく自分の間合いをキープしながら押し込んだ。先場所はかど番で気持ちに余裕はなかっただろうが、今場所は落ち着いて取っている。敗れた北勝富士戦で見せた引きがなければ、このまま優勝争いを引っ張るだろう。

もう1人の大関、朝乃山も吹っ切れた感じだ。連敗を4日目に止めたが、本当の勝ち運に乗れるかは、1勝3敗で迎えたこの日が大事な一番だった。勝因は立ち合い、右が入ったことで流れをつかんだことに尽きる。その後は無理にまわしを取ろうとせず、前に出ることに徹した。やはり、いい踏み込みで自分の立ち合いさえ決まれば、先場所までのような相撲を取れる。序盤の5日間を終え役力士に全勝はいないが、両横綱不在の場所で、両大関が優勝争いを引っ張らなければダメだ。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)