大関朝乃山(26=高砂)が、前代未聞の逆転優勝に挑む。小結隠岐の海を上手投げで下し、初日から3連敗も、4日目から8連勝で勝ち越しを決めた。2日目以降はオンライン取材に応じてこなかったが、節目の日に胸中を打ち明けた。1場所15日制が定着した49年夏場所以降、初日から2連敗以上した優勝力士はいない。しかし、大関貴景勝らトップ4人との差は1。大混戦場所で大関の意地を見せる。

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2日目から口を閉ざし続けてきた朝乃山が、オンライン取材に姿を現した。パソコン画面に映る報道陣に向かって「久しぶりです」と開口一番。そして、明るい声で「応援してくれる方が記事を見て『どうしたんだろう』と思う。『自分は元気です』と言いたい」と応じた理由を明かした。

初日からの3連敗を忘れさせる大関相撲だった。立ち合いすぐに左上手を取り、すかさず右を差してベテラン隠岐の海を上手投げで転がした。危なげのない相撲で勝ち越しを決め、「どっしりとした相撲が自分の相撲」とうなずいた。

横綱不在で優勝への期待がかかる中、初日からまさかの3連敗。「休場したいぐらいショックだった」とどん底気分を味わった。同時に「追い詰められたらやるしかない」と開き直ることもできたという。4日目に初白星を挙げると、肩の力が一気に抜けた。ただ「すぐに取材に応じたくはなかった。勝ち越したら答えようと思った」。自身と向き合い続け、破竹の8連勝で勝ち越し。それでも「大関の勝ち越しは当たり前」と気を引き締めた。

15日制が定着して以降、初日から3連敗して優勝した力士はいない。しかし、1差で追いかける貴景勝、正代との直接対決を控えるだけに、逆転優勝の可能性は残っている。持病の膝痛で7月場所から外出もままならない師匠の高砂親方(元大関朝潮)に何よりもの良薬が白星。加えて賜杯を掲げることができればなおさらだ。「自分は3敗。先は考えずに自分の相撲に集中する」。無心の先に賜杯が待っている。【佐々木隆史】