今場所も大混戦のまま優勝争いも、いよいよ大詰めを迎えようとしている。今年は幕尻優勝が2回も出る波乱の年だが、今場所も東前頭14枚目で新入幕の翔猿(28=追手風)が旋風を巻き起こしている。協会トップの八角理事長(57=元横綱北勝海)も「度胸がいい」と高評価した。

新三役を有望にしている押し相撲の隆の勝(25=千賀ノ浦)との一番も“ミラクル”だった。立ち合い、翔猿本人は呼吸が合わず「待っただと思った」と吐露したが、そのまま成立。押し相撲相手にフワッとした踏み込みになってしまった。だが、これが幸い。喜び勇んで出た隆の勝と絶妙な間合いができ、突き出してきた右腕を引っかけるように手繰った。これで横につき、右手で相手の頭を押さえ付け、左は相手まわしの結び目付近をとり、背後に回って送り出し。2敗で優勝争いのトップを守った。

この何とも言えない一番に八角理事長は「タイミングが合ったというかな。優勝がかかってくる相撲には、こうゆうことがある。うまく対応したんじゃないかな」と評した。持ち前の反射神経を生かした翔猿を、さらに「勝ってる時は動きがいい。よく頑張っている」と続けてほめた。

新入幕だが28歳。「年齢が上がっての新入幕だから、大人になって、というか若くして上がったわけではない。高校、大学と経験があるから、ここ一番の力の出し方とか知っているんだろう。度胸もあるような気がする」と内面を察した。

優勝争いは正代と2敗でトップに並ぶ。その正代は14日目に3敗の大関朝乃山と戦う。その見通しについては「正代は勢いがあるし、朝乃山も(初日から3連敗の連勝で)復活しつつある。面白い相撲になると思うよ」と大きな鍵を握る一番を占った。