大関貴景勝(24=千賀ノ浦)が3敗を死守して、優勝戦線に踏みとどまった。

立ち合いは踏み込まずに見ながら立ち、突っ張り合いからいなしで翔猿を崩す。果敢に直進する相手を、最後ははたき込み。勢いある新入幕力士に大関の貫禄を見せた。負ければ優勝の可能性が消滅する一番だったが「いつも通りあまり変わらず、自分の体の反応に任せてやった」と冷静だった。

小兵にはめっぽう強い。照強や阿武咲、炎鵬ら身長180センチ未満(対戦時)の相手に対して、約2年間負けなし。175センチの翔猿に勝って15連勝とした。

千秋楽で翔猿が正代に勝ち、自身が勝てば、3敗で並んだ3人による優勝決定ともえ戦にもつれ込む。黒星が許されない千秋楽は結びで朝乃山との大関対決。「自分の持っている力を全て出し切りたい」と静かに闘志を燃やした。

大関の優勝は17年初場所の稀勢の里以来、21場所遠ざかっているだけに出場最高位の意地を見せたい。複数の横綱全員が初日から休場するのは83年夏場所以来。その場所を制したのは、場所前に婚約した千葉有希奈さんの父で、当時関脇だった元大関北天佑だった。天国で見守る“義父”の再現となるか。【佐藤礼征】