正代(28=時津風)が大関昇進を果たした。熊本出身では58年ぶりとなる新大関の素顔とは? 日刊スポーツでは「くまモン大関 正代直也」と題し3回連載。2回目は東農大相撲部の安井和男監督(62)。

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自分を貫いた先に、大関正代が誕生した。東農大相撲部の安井監督は「当時から自分のスタイルを持ち、貫いていました」と正代について振り返る。もろ差しのうまさや、体の柔らかさ。安井監督の目からは「素晴らしい資質を持っていた」と映った。そんな正代が入学当初から言われ続けるも、変わらなかったのが腰の高さだった。

安井監督 とにかく握り拳1個分でいいから、腰を縦に下げていこうと言った。十数センチだけでもいいから。そしたら学生横綱になれるよって。そう言ったんだけどね。

教え通りに腰を下げなかった正代。しかし、2年時に学生横綱に輝いた。以降も、ことあるごとに「拳1個分」の指導を受けたが不変だった。安井監督は「決して反抗しているわけではない。自分のスタイルがあって、それが合っていたのでしょう」と分析。腰高が原因で負けることもあった。それでも、安井監督は見守った。「学生横綱になれる力があるわけだから。それ以上は言いませんでしたよ」と振り返る。

角界に入っても、正代は正代のままだ。周囲から腰高について苦言を呈されても崩さず、大関にまで昇進。「これが自分の相撲。今すぐ改善はできない。前に出る力を磨いていくだけ」と正代。一般的に弱みと言われる腰高を、貫いた信念で強みに変えた新大関。2度目の賜杯、そしてもう1つ上の地位へ、これからも貫き通す。【佐々木隆史】