小結照ノ富士(28=伊勢ケ浜)が、幕尻優勝を狙う志摩ノ海との2敗対決を制して優勝に望みをつなげた。打ち出し後に行われた取組編成会議で、千秋楽は1敗で単独トップの大関貴景勝との直接対決が組まれた。本割で破り、優勝決定戦も制すれば、7月場所以来3度目の賜杯を手にする。再入幕だった同場所で劇的な復活優勝を成し遂げた苦労人が、逆転優勝で1年納めの場所を締めくくる。

   ◇   ◇   ◇

2敗を守った照ノ富士は、異様に落ち着きを払っていた。「毎日積み重ねていけば、後から結果はついて来るので」。会場を引き揚げる直前に、結びの一番で貴景勝が1敗を死守。優勝争いは2人に絞られたが「そういうのは意識していない」と緩まなかった。

志摩ノ海に実力差を見せつけた。立ち合いすぐに右で前みつ付近を取ると、左右に動かれても、下からおっつけられても離さず。勝負どころを見極め、左上手を取って盤石な体勢を作って寄り切った。「思い切っていこうと思っただけ。体が勝手に反応しただけ」と、自然体で圧倒した。

身近な存在から刺激を受けている。両膝の負傷や内臓疾患などで、一時は大関から序二段まで番付を落としたが、再入幕の7月場所で復活優勝。両膝の完治は難しい中、朝稽古の他に筋力トレーニングを行う日々が続いている。部屋のトレーニングルームで、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)と鉢合わせすることがあるという。今もトレーニングをしている師匠の筋骨隆々の体を見て「60歳ですからね。こんな年でも筋肉つけられるんだから、29歳の自分がどうこう言う立場ではない。頑張るしかない」と刺激を受けている。

貴景勝を破り、優勝決定戦も制すれば逆転優勝が決まる。18年九州場所の貴景勝以来、史上10人目の小結優勝も懸かる中「とりあえずは明日の一番に集中するだけ」とシンプルな言葉に力を込めた。今年2度目の賜杯に向けて、無心で突き進む。【佐々木隆史】