優勝決定戦の貴景勝は、押しの神髄のような相撲を取った。本割で負けたことで、一番大事な自分の相撲を貫き通すんだという原点に戻れたんだろう。

本割でこの相撲を取ってほしかったが、大関として勝たなければ、負けちゃいかんという雑念が頭に入っていたと思う。立ち合いで当たれていないし、上から手を出しに行って相撲が硬かった。優勝決定戦までの短い時間で、よく切り替えられた。今場所は初日から横綱が不在で大関も1人抜け2人抜けとなる中だけに、3年ぶりの大関優勝は余計に価値がある。来場所は綱とりだが、やはり横綱に勝って、最低でも今場所ぐらいの高いレベルの優勝がほしい。

今年は5場所全てで優勝力士の顔触れが違った。新大関が2人も誕生しているのに、そんな現象が起こるのは、それだけ戦国時代ということ。来年は新横綱が誕生して上位陣が安定してくれることを願いたい。その意味では3大関の中で24歳と一番若い貴景勝に、その実現性は高いだろう。

最後に、私事ですが高砂浦五郎としてはこの評論が最後になります。相撲人生はついてたなと思いますが正直、まだピンときません。場所前から「これが最後、これが最後」と何度も言われましたが、これで死ぬわけじゃないから(笑い)。来年、名前が変わっても相撲には変わらぬ情熱でかかわりたいと思っているので引き続き、よろしくお願いします。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)